ブラームス ピアノ協奏曲第1番ニ短調 作品15
さて、記念すべき第1回目はヨハネス・ブラームスの
ピアノ協奏曲第1番ニ短調をとりあげます。
数えきれないほど存在するピアノコンチェルトのなかで、
私がもっとも好きな曲がこのブラームスのピアノ協奏曲第1番です。
ブラームスといえばドイツの作曲家ですが、シューマンの弟子であり、
R・シュトラウスの先生です。
師弟関係のリレーがとても好きです。
ドイツ音楽の本流のように思えます。
ある日、シューマンの娘が玄関のドアをあけると
そこに金髪碧眼のハンサムな青年が立っていました。
それがまだ20歳のブラームスです。
その時、きっとシューマンは驚愕しただろうと思います。
とっても素晴らしい今までに聴いたことのないようなものでしたから。
(私はブラームスの初期ピアノ作品にはベートーヴェンの後期ピアノ作品の
影響が多くみられると思っています)
数々の名曲を作曲するのですが、
シューマンの影響をうけながらも、
健康的な独自性のある大作を生み出していきました。
そのなかの一つがピアノ協奏曲第1番ニ短調です。
ブラームスはその生涯にピアノ協奏曲を2曲、作曲しています。
どちらも規模の大きな曲ですが
ピアノ協奏曲第一番はブラームスが24歳のときの作品です。
3つの楽章からなりますが、
とされる静かで美しい第二楽章がとても好きです。
お薦めの演奏
①ジュリアス・カッチェンJulous Katchen ルドルフ・ケンペ盤
1967年 ICA CLASSICS
ジュリアス・カッチェン(1926-1969)はアメリカのピアニストですが、ブラームスのスペシャリストで生涯にわたりこの曲を4回録音しています。これはその最晩年のものです。残念ながら癌で42歳で亡くなっています。カッチェンのこの演奏はそれまでの3回と異なり、何か生き急いでいるような、どこか悲しい気迫を感じます。やはりブラームスにカッチェンははずせません。
②ウィリアム・カペルWilliam Kapell ドミトリー・ミトロプーロス盤
1953年 MELODRAM
ウィリアム・カペル(1922-1953)もアメリカのピアニストです。残念なことに飛行機事故で夭逝しています。この演奏は第二楽章がとても素晴らしいです。美しく、そしてどこまでも深いです。ギリシャの高僧との異名をもつミトロプーロス指揮のオーケストラが支えて演奏をより深いものにしています。
③エリック・テンベルクErik Then-Bergh カレル・アンチェル盤
1958年 SUPRAPHON
エリック・テンベルク(1916-1982)はドイツのピアニストです。統合失調症を患っていたピアニストですが、この演奏は王道とも言えるような演奏です。美しく、しなやかで、何度もはっとさせるようなところがあります。個人的に第三楽章はベストだと思います。
まとめ
名曲中の名曲ですから、他にもたくさんの良い演奏があります。有名どころを少し挙げると、カーゾン、セル盤、ギンペル、ケンペ盤などなど枚挙にいとまがありません。ですが、やはり上述の3つの演奏はお勧めです。それにしてもアメリカ出身の有望な2人のピアニストが若くして亡くなったというのはアメリカ音楽界の悲劇としか言いようがありません。当時、ロシアやヨーロッパからの移民や亡命組がアメリカの音楽界を牛耳っていましたから。とりわけ国内での活動も多かったカペルを失ったことは大きかったでしょう。もしこの2人が長生きをしていたら歴史が、少なくともブラームスの演奏史が変わっていたのではないでしょうか。